1. すでに半世紀以上にわたり他分野に先駆けて、大学間どころか国家間の壁も乗り越えた共同研究を志向し輝かしい成果をあげてこられた基礎物理学の分野で、いまさら「専攻・教室・研究所の間の壁を取り払う」ことを目的にされなければならないとは何とも寂しいことです………(中略)………
2. とりわけ、国内・国際の共同研究協力のコアとしての役割を果たしてこられた基礎物理学研究所が、今になって個別大学間の、共同ではなく競争原理の渦中に身を投じ、一大学の拠点形成に加担されることは、研究所を共に育て享受されてきた全国の研究者から違和感を持たれることは必至であり、いささか矛盾を感じます。むしろ、その伝統的な特長と京都という地の利を生かして、基礎物理学研究所のみならず、専攻・教室まで一丸となって基礎物理学における新たなレベルの国内・国際共同研究・教育の先端的拠点を形成することを最大の売りにされるのも一案かと思います。
この委員は、物理学分野が、そしてとりわけ基礎物理学研究所が、これまで「大学間どころか国家間の壁も乗り越えた共同研究を志向し輝かしい成果をあげて」きたこと、「国内・国際の共同研究協力のコアとしての役割を果たして」きたこと、を高く評価しているのです。そしてその基礎物理学研究所が「個別大学間の、共同ではなく競争原理の渦中に身を投じ、一大学の拠点形成に加担」することはおかしい、むしろ逆に、物理学・宇宙物理学専攻の3 教室のほうこそが基礎物理学研究所にならって、大学間の卑小な競争というものを超えて「新たなレベルの国内・国際の共同研究・教育の先端的拠点を形成すること」をめざすべきだ、と言っているのです。このコメントを読んだとき、この委員の見識に私はショックを受けました。本当にその通りです。「21 世紀COEプログラム」という、大学間で卑小な競争をさせるこのつまらないプログラムへの申請書にこそ、我々の学問本来の要求から発した国内・国際の共同研究という視点を高らかに謳うべきだ、という深い見識です。
2003年4月 基礎物理各研究所 所長挨拶より
http://www.yukawa.kyoto-u.ac.jp/contents/about_us/shochou.pdf