http://www.tokyo42195.org/2011/medical.htmlあと2週間の注意点10ポイント
あと2週間で、東京マラソン2011がスタートします。参加を予定されているランナーは、心待ちにしていることと思います。特に、初めて‘東京’を走るランナーの皆さんは、もう待ち遠しくてたまらないといったところでしょうか。
スタートまで間がありませんので、これから激しいトレーニングを行うことはおすすめしません。今年の1月に一度でも25km以上の距離を走り通すことのできた方、あるいは1月に月間200km以上の距離を走った方は、マラソンの距離に対する耐性がある程度できているでしょう。走行距離を半分以下に落として、身体をフレッシュな状態にもっていくことをこころがけてください。1月に最長15km程度の距離しか走っていない方、あるいは1月に200km以下しか走っていない方は、1週間前にできればゆっくり余裕を持ったペースで20km走を行えれば理想的です。しかし、その日を除いては、練習量をあわてて増やす必要はありません。疲労をためては逆効果です。
いずれにせよ、この直前2週間はマラソン完走の自信がわき、練習の総仕上げの大事な時期です。しかし、その自信がケガや病気につながりやすい時期でもありますので、‘東京’完走に向けて一番注意が必要な時期です。十分な栄養を摂り、しっかりとしたウォームアップとクーリングダウンを行い、日常的なうがいや手洗いといった基本的なことをしっかりと守って下さい。この2週間は、これまでにした事のないトレーニングや初めてのコースでのトレーニング走などはせず、また新しい靴を履く、といったことは控えるべきでしょう。
さて、東京マラソン2011医事部会では、ランナーの皆さんに対して、様々なメディカル情報を発信してきました。今回は、あと2週間の過ごし方や‘東京’当日の注意点を10ポイントにまとめました。元気に安全に‘東京’を完走するための参考として下さい。1.天気予報をしっかりと確認してください
平年の東京では、2月の平均気温は4から5~6度と観測されています。1年の中では1月に次いで2番目に気温が低い月です。これまでの‘東京’でも大変に寒い日があり、みぞれが降った時もありました。寒さ対策は障害防止のために大変重要です。レースの1週間前から、レース当日の天気予報をしっかりと確認してください。大会当日は雪が降る可能性があるということも念頭におき、レースの準備をしてください。2.気温とケガや低体温症の発生は関連します
東京マラソン2010では、みぞれが交じり、15Km地点で低体温症に陥ったランナーがいました。平年並みの気温であっても‘東京’の終盤である午後2時以降は、海からの風を受け、体感温度が急激に低下し、かつエネルギー切れに伴うペースダウンの後は、体温維持が難しく、低体温症に容易に陥りやすくなります。また、気温が12度以下の場合、捻挫、膝痛などの整形外科的問題が頻発し、途中棄権が多くなります。逆に気温が15度以上になると、脱水症の発症率が高まり、21度以上になると、熱中症の危険が高まります。レース当日の気温に注意してください。3.用具の準備を早めにしてください
レースに必要な用具のリストアップをします。天候は、雨や雪も想定したウェアの準備が必要です。雨や雪になれば当然気温は低くなります。‘東京’では手袋は必需品です。帽子やネックウォーマーも有用です。直前になってショップに買いに走るのは時間と体力を浪費し、メンタル的にもネガティブです。3,4日前には準備完了しましょう。4.インフルエンザに注意してください
2011年2月初旬に、「新型インフルエンザH5N1」が全国的に大流行しました。出場予定者は、インフルエンザになると考えものです。発症がレースの5日以上前で、抗インフルエンザウイルス剤を適切に用い、症状が完治していればレース出場は可能かもしれません。しかし、発熱した状態でのレース出場は、十分なパフォーマンスが発揮できないばかりか、危険でさえあります。また、他のランナーに感染させるという社会問題にもなりえます。‘東京’には無理に参加しないようにお願いします。
インフルエンザやカゼの予防は、室内の加湿、うがい・手洗いなどの励行、マスクの着用、などです。普段より、こころがけましょう。5.数日前の注意
レースの1週間前に、人によっては15~30kmの距離を走ると思います。しかし、その後は練習量を減らしてとにかく疲労を取り除くことを考えなければなりません。もはや10km以上のランニングは必要ありません。レース前の3日間は、たんぱく質の摂取を少なくし、炭水化物(米、パスタ、ポテト、パン、シリアル、甘いもの)を普段より多くとるようにしてください。これにより筋肉へのグリコーゲン貯蔵が促進されます。また、レース2日前ぐらいから意識して水分補給を積極的に行ってください。身体に十分水分を貯め込んだ状態をつくることが、レース中の脱水予防となります。6.前日の注意
前日に頑張ったからといって、急に練習効果はあがりません。前日は、体力を消耗しない程度の練習にしましょう、数Kmのジョグを軽めにする程度です。
食事は炭水化物を多めに摂ると良いでしょう。勿論、食べ過ぎは禁物です。アルコール飲料は脱水症状を引き起こす原因となりますので、レース前日の飲酒を避けてください。
‘東京’当日は、スタート会場は7時にオープンし、9時10分にスタートします。ゆとりを持って会場入りできるように、朝は早めに起きる必要があります。前夜は早めに休みましょう。久しぶりに東京に来た方もいるかもしれません。あまり、活発に動き回るのは疲れのもとです。観光はあまり欲張らず、落ち着いた雰囲気でリラックスし、前日はたっぷり休養できるようにしましょう。
EXPO期間中、東京ビッグサイトで‘東京’のチェックインをして、ナンバーカードを受け取ります。その中に、「スタート前チェックリスト」が入っていることを確認してください。ナンバーカードの裏側に、緊急時の連絡先を必ず記入してください。7.レース当日の朝
いよいよ‘東京’を楽しむ日です。自信を持ってレースに参加しましょう。朝起きたら、ナンバーカードと一緒に配布された「スタート前チェックリスト」で体調を必ずチェックしてください。熱、嘔吐、下痢、胸痛などの症状がある場合、出場はおすすめできません。マラソンは今日だけではありません。無理をせずに、勇気をもって棄権するのも大切です。
体調に問題なく、‘東京’を走るのであれば、朝食をしっかりと摂り、排便も済ませてください。
天候には十分注意が必要です。天気予報を確認し、最悪の場合を想定した準備をします。十分に保温性のある服装でレースに参加してください。極端な厚着よりも、帽子、手袋やネックウォーマーなどの露出部をカバーする小物が役立ちます。
スタート会場ではレースの前に、いつもと同じ準備体操をします。周りの人のマネは必要ありません。筋温度を高め、より大きな動作・運動が滑らかにできるようにするのが目的です。また、普段ストレッチをしている方は、普段と同じストレッチをウォーミングアップでも行いましょう。 完走に5時間以上かかる方は、スタート会場に到着してからも、何らかの食べ物を補給する方が望ましいでしょう。また、ウォームアップ後の尿の色が濃ければ、体内の水分不足が考えられます。スタート30分前に、水分を300ml程度飲みましょう。糖分、塩分、BCAAが入ったスポーツドリンクがおススメです。8.レース中
スタートしたら、無理のない自分のペースを守ってください。レースではついつい、飛ばしすぎる傾向があります。‘東京’の10Kmまでは下り坂が多いため、ペースが速くなりがちです。しかし、周りの人を気にせず、自分のペースを守ってください。これが体に無理がない完走ペースとなります。自分のペースを守るのに、腕時計は必需品です。普段から、走りながら見やすい時計をつけて走ってください。 レース中の緊急事態は多くの場合、「体調が悪かったけれど棄権したくなくて無理をした」「家族や友人がたくさん応援に来てくれたから、無理をした」という場合に起こりがちです。レース途中で、体調が悪いと感じた場合には、休んだり、棄権したりする勇気を持ってください。20Kmまでは5Kmおき、それ以降は約2.5Kmおきに救護所を設けていますので、ドクターやナースに相談もできます。 給水所を2~3Kmおきに設けています。ペースの遅い方は、水の飲みすぎに注意が必要です。「水中毒」という病態になるかもしれません。レース中盤以降、給食所が設けられています。疲れたときの、食事は心と体をリフレッシュさせ、水中毒の予防にもなります。小銭を用意しておいて、いざというときは沿道のコンビニエンスストアで給食できるようにすると安心です。9.ラストスパート
たいていのランナーはペースダウンと闘いながら、フィニッシュラインに向かいます。ラストスパートをして記録を短縮し、1つでも順位を上げたい気持ちは理解できます。しかし、ラストスパートは、心臓に急激に負担がかかり危険です。また、フィニッシュラインに倒れ込みながら走りこまれると、他のランナーを巻き込んだ2次災害が起こるかもしれません。他のランナーとの無理な競争は控えて、楽しく余裕を持ってフィニッシュしてください。
マラソンの部は、フィニッシュラインから、荷物受取地点へ行くまでの距離が約350mあります。その間に飲料、フィニッシャータオルを受け取り、計時チップはずしの後、完走メダルを受け取りますので、フィニッシュ後も自力で歩ける程度の余裕は残しておいてください。フィニッシュ後に、座り込んだりしてしまうと、どんどん体温が失われ、急速に低体温症に陥ります。10.フィニッシュ後
フィニッシュ後は、まず保温と体温維持が重要となります。可能な限り自力で歩いて、なるべく早く預けた自分の荷物を受け取り、上着を羽織りましょう。水電解質補給及びバナナなどのエネルギーになるものを積極的に摂りましょう。予想以上に気温が高く発汗が多かった場合には、身体が塩分を欲していますので、塩分のあるものも適宜補給してください。また、クーリングダウンを少し行いましょう。乳酸などの代謝産物が速やかに除去されやすくなります。軽い全身運動、体操、静的なストレッチを組み合わせるといいでしょう。いかがでしたでしょうか。
東京マラソンは世界一安全なマラソンレースを目指し、多くの方々の協力に支えられメディカル体制を整えています。ランナーの皆さんの協力も、よろしくお願いします。
東京マラソン2011医事部会委員長
日本陸上競技連盟医事委員長 山澤文裕